発行日:2024年7月1日
発行者:村畑出版
128mm×188mm 240ページ
グラフィックデザイナーが母になったら、色と形に辿りつかない日々が始まった。妊娠してお腹が大きくなり、のそのそと歩まねばならぬ体に変化していく中で見えてきたのは、ままならない体と足並みの揃わない社会だった。育児が始まると目の前に立ちはだかる仕事と育児の両立という壁。人々の暮らしと地続きであるはずのデザインの仕事と、目の前の家事育児という暮らしの相性の悪さ。子どもの時間と、仕事の時間。子どもを通して見ている世界と、仕事を通して見えている世界。混沌とした曲線の世界と、秩序だった直線の世界。二つの間で立ち往生しながら見えてきたのは、資本主義のレースと止まらぬ環境破壊とジェンダー不平等が一つの輪をなしている景色。そして子どもが手をひいて連れて行ってくれる、土の匂いがする景色。かつて自分も知っていた、あの曲線の景色。
《目次》
想定外の曲線
四角くて軽くて早い まあるくて重くて遅い
期待される自然な形
産まれたての赤
混乱の白い血
見えない仕事 見えない性
母のグラデーション
変形するひと 変形しないひと
命の結び目
色と形
《著者プロフィール》
長嶋りかこ(ながしま・りかこ)
グラフィックデザイナー
1980年生まれ。2003年武蔵野美術大学視覚伝達デザイン科卒。2013年に自身のデザイン事務所village®を設立。ビジュアルアイデンティティデザイン、サイン計画、ブックデザインなど、視覚言語を基軸としながら活動し、対象のコンセプトや思想の仲介となって視覚情報へと翻訳する。
これまでの主な仕事に「札幌国際芸術祭”都市と自然”」(2014)、「東北ユースオーケストラ」(2016-)、「アニッシュカプーアの崩壊概論」(2017)、ポーラ美術館の新VI計画(2020)、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館「エレメントの軌跡」(2021)、「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020」(2021)など。また各仕事においてマテリアルのセレクトにて環境負荷の低減を探る。墨田区の職人との協働である Sumida Contemporary (2018)では仕事で出た印刷のヤレ紙をパルプ化して紙を作り屏風を製作、kinnasand「SCRAP_CMYK」(2020)では廃ペットボトルを 100%再利用した生地にヤレ紙のインク汚れをパターン化したスタイルデザイン、Kvadrat 「Irreversible scale」(2024)では温室効果ガスの削減目標のためのカレンダーをデザインするなど、気候危機に関心を寄せ活動している。
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